クロガネ・ジェネシス
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第一章 海上国家エルノク
第11話 絶望の未来予知
「流石に疲れるわね……」
「ええ……」
その頃、アーネスカとユウの2人はアルトネールが捕らえられている部屋を目指してひたすら階段を上り続けていた。場所が分かっているとはいえ、天を貫くとすら称された時計塔を階段で直接登るのはそれだけで重労働極まりない。
「今何階?」
「60階くらい……」
「あ〜もう! いつまで上り続ければいいのよ!」
苛立たしげにアーネスカが叫ぶ。
全身が汗ばみ、額から玉のような汗も噴き出している。亜人のユウもそれなりに疲れているようだ。
「少し休みましょう! 体力が続かないわ!」
アーネスカは階段の途中でいきなり座り込む。
「で、でもアルト様の救出もしなきゃ……」
「あんただって疲れてるでしょ。こっちが疲れきってたら、いざ会えても守れないでしょう! 少し体力の回復! 一旦休む!」
「仕方ないね……」
ユウもアーネスカの隣に座る。2人揃って肺に空気を送り込む。
「アーネスカさん。休みついでに、いくつか質問していい?」
「別に構わないわよ。何が聞きたいの?」
「あなたは……亜人を憎んでるって聞いたわ。それは今も変わらないの?」
「そーゆう話か……」
アーネスカは水筒の水を一口含む。
「別に憎んでないわよ。憎んでたら、亜人と協力して、姉さんの救出なんてするわけない」
「そう、良かった」
ユウは安堵の笑みを浮かべた。
「どうしてそんなこと聞くのよ?」
「アルト様や、アマロ様に聞いたんです。アーネスカさんは、両親を殺した亜人に復讐するために出て行ったと」
「まあね……その通りよ」
――まさかそれがエルノクにいるとは思わなかったけどさ……。
確かに家を出た直後は全ての亜人を憎んでいたこともあった。しかし、今となってはそれが無意味であることをアーネスカは理解している。しかし、親の仇である亜人だけはなんとしても倒したいと思う。
「私は……人間も亜人もどちらも手を取り合える。そんな未来を信じています」
「そう。零児と同じね」
「零児さんと?」
「ええ。零児も人間と亜人の共存を望んでいるからさ」
アーネスカはユウに零児の目的を軽く伝える。そして、今まで何のために旅をしてきたのかも。
「人間と亜人の共存……ユウやバゼルさんもそのために活動してるんでしょう? なら、零児だって喜んで手伝うわ」
「だとしたら、嬉しいです」
「こき使ってやって頂戴。あいつ冷静を装っているけど、すぐに熱くなるから扱いやすいわよ」
「フフ……分かりました」
ユウは軽く笑った。その表情には猫らしい独特の笑顔があった。
「所でさ。あたしも1つ聞いていい?」
アーネスカがやや身を乗り出してユウに問う。
「は、はい」
「あんたはどうして人間であるアルト姉さんやアマロ姉さんに協力してるの? 大半の亜人て、人間を敵視してるのがデフォなのにさ」
「そうですね……」
ユウはどこか遠いところを見る表情をした。ガラスのない窓の光が、彼女の横顔を照らす。チャイナドレスと同じピンク色の艶やかな髪が、その光を反射している。
「初めてあった人間が、アルト様だったから……かな?」
「始めてあった?」
「ええ。私も小さい頃に他の亜人同様、人間は悪い奴等だって教えられたんですけど、実際は全然違いました。アルト様は食べ物もなく空腹だった私に手を差し伸べてくれたんです。例え、それが人間の気まぐれだったとしても嬉しかった。アルト様はとても暖かかったんです。まるで、女神か何かのように……」
過去を思い出すユウの表情はどこか夢見心地でうっとりしている。それほどまでに、彼女にとってのアルトネールの存在が大きいということなのだろう。
「そして、教えられたんです。人間としての行き方を。人間と亜人が憎み会うことはとても愚かしいことであることも。あの人の言うことなら信用できる。だから、人間と亜人の共存のための活動をお手伝いしようと思ったんです」
「そっか……」
アーネスカは穏やかな笑みを浮かべた。目の前の猫の亜人が嬉々として語るアルトネールは輝いているに違いない。
「信用してるのね。アルト姉さんを」
そう問うと、ユウは満面の笑みを浮かべた。
「はい!」
そう聞いて、アーネスカは両手を階段につけて体を大きく反らす。
「いいわね〜そこまで信頼されるって。あたしもそこまで信頼されてみたいわ」
「あ、も、もちろん! アーネスカさんのことだって信用してますよ!」
ユウがアーネスカを信用していないと感じたのか、ユウは慌ててそう付け加える。
「ふふ、ありがと」
そう返しつつ、アーネスカは立ち上がり、大きく伸びをする。
「う〜〜〜ん! よし! じゃあ、そろそろ行くわよ!」
「はい!」
2人は再び階段を上り始めた。
「はぁ……はぁ……。こ、この部屋ね……」
「はぁ……はぁ……みたいです……」
2人は息も絶え絶えにアルトネールがいるであろう部屋の前までやってきた。
地上70階。即ちこの塔の最上階だ。フロアにはガラスがはめられていない窓があり、そこからアルテノス全域を見渡すことが出来る。ここより上は屋上だ。
「ユウ、ノックお願い」
「はい……」
ユウが息を整えて、アルトネールがいるであろう部屋の扉をノックする。
「はい……」
物静かな女性の声。その声は間違いなくユウの知るアルトネールの声だった。
「アルト様。私です。ユウです!」
「ユウ?」
「お迎えに上がりました! 扉をそちらから開けることは出来ませんか?」
「こちら側からでは、この扉を開けることは出来ないわ。残念だけど……」
「ユウ下がって」
アーネスカが扉の前に出る。
「どうするの?」
「これで扉をぶち抜くのよ」
そういってアーネスカはガンベルトから回転式拳銃《リボルバー》を取り出した。それを扉に向けて銃弾を放つ。
「キャッ!」
ユウがその音に驚いて両耳を塞いだ。直後、アーネスカがドアノブを力づくでこじ開けようとする。ぶち抜かれた扉は若干の抵抗を見せるものの、アーネスカが力づくで引っ張ることで大きく開かれた。
ユウがそそくさとその部屋へ入る。
「ユウ!」
「アルト様!」
部屋の中にいたアルトネールは、ユウの姿を確認して笑みを浮かべる。そして、ユウは彼女の胸に飛び込んだ。
「よく……こんなところまで来ましたね……」
穏やかな笑みを浮かべてユウを抱きしめ、その頭を撫でる。
「アルト様こそ、ご無事で何よりです」
「……」
なんとなく置いてけぼりにされた気分になったアーネスカはユウの背後からゆっくりと姿を現す。そして、アーネスカは目の前の人物と、過去自分が姉と呼んでいた人物と照らし合わせる。
結果、目の前の女性は間違いなくアルトネール・グリネイドであると認識した。
アーネスカと同じ鮮やかな金髪に、白い肌。全てを包み込み、全てを許してくれるかのような聖母の如き瞳。白いロングスカートとブラウスに、ベージュのベスト。首元には赤い紐で縛ったタイがある。
12年の歳月を経て、アーネスカは今血の繋がった姉と再会した。アルトネールの反応を、アーネスカはうかがう。
「姉さん……」
「姉さん?」
アマロリット以外に自分を姉と呼ぶ人物を彼女は1人しか知らない。否、その1人以外ありえない。
「……!! あなた……まさか……」
アルトネールは驚愕する。なぜ今ここにいるのか、今まで何をしていたのか。いやそんなことより、ここで一体何をしているのか。
「アーネスカ……なの?」
「そうよ、アルト姉さん……」
アルトネールもアーネスカも、お互い何を話せばいいのかわからないでいる。言いたいことはたくさんあるはずだった。しかし、言葉が出てこない。
「なぜ、ここにいるの?」
そして、搾り出した言葉がそれだった。そんなことを言いたいわけではないはずなのに。
「色々あってさ、姉さん救出に協力することになっちゃって……」
アーネスカもまた淡々とそれに答えることしか出来ない。
「そう……」
アルトネールの表情が引き締まる。そしてアーネスカの傍までやってくる。
「姉さん……?」
「……」
直後、フロア全体に乾いた音が響いた。
アルトネールがアーネスカの頬を平手打ちしたのだ。
アーネスカは頬を刺す痛みに耐え、表情を変えずに、アルトネールを見つめる。
「今まで、私達がどれほどあなたのことを心配したことか……!」
「姉さん……」
アルトネールの頬を涙が伝う。それは最愛の妹に再会できた嬉しさと、今まで自分とアマロリットを心配させた怒りの両方の感情が入り混じった涙だった。
「姉さん……ごめんなさい」
アーネスカもまた涙を流した。彼女は後悔していた。12年前、2人の姉をほったらかしにして、自分1人だけ両親の仇を打つと息巻いて家出したことを。自分がここまで心配されているなんて思いもしなかった。そしてそれが何より嬉しかった。
アルトネールはアーネスカを抱きしめる。
「もう、誰にも相談しないで勝手に家を空けたらだめよ。私達、もう3人しかいない姉妹なんだから……!」
胸の奥が熱くなる。瞳から、意識せずとも涙が溢れてくる。
「ねえ……さん……姉さん!」
アーネスカはアルトネールの胸の中で泣いた。心の奥に、復讐のために封印していた様々な感情が堰を切って溢れ出てきていた。
アーネスカとユウは自分達のほかにバゼルとネルがこの塔内部で、ギンを救出しようとしていることを伝えた。
「そう……バゼルと、ネルという方がここに来ているのね?」
「はい、アルト様」
「この後の手はずはどうなっているの?」
「アルト様からバゼルさんに精神感応で連絡を取り、お互いの状況を確認した後、脱出の予定です」
「なるほど……。わかりました。バゼルに連絡を取ってみます」
アルトネールは立ち上がり、祈るように両手を合わせ、目を閉じる。そして意識を集中させ始めた。生まれつき体に刻まれた魔術回路を通って、魔力が体中を駆け巡る。自分の意識が体から離れるかのような錯覚。彼女の意識は目に見えぬ魔力の電気となって、自らの繋ぐべき亜人の意識を探して『リベアルタワー』を駆け巡る。
その対象はすぐに見つかった。バゼルの精神と自分の精神を接続し、自らの言葉をバゼルに伝える。
『バゼル……私です。分かりますか?』
直接彼女は声を出していない。心の中で思ったことを彼女の精神で繋がれたバゼルの意識に直接送る。
『アルトネールか!』
『はい、アーネスカがお世話になりましたね』
『ということは、無事再会できたのだな』
『ええ。大体の事情はアーネスカとユウの2人に聞きました。そちらはどうです? ギンを助けることは出来ましたか?』
『ああ、これからそっちに向かい合流を考えているところだ』
『こちらへですか? しかし、ここはリベアルタワーの最上階。こちらから下りた方が効率が良いのではないですか?』
『いや、タワーの門が閉められていてな。俺達は閉じ込められたみたいなんだ』
『なんですって!? それでは、ここから脱出する術はないということになりませんか?』
『いや、まだ手はある。こんなときのための秘策がな』
『その秘策とは?』
『まずは合流が先だ。その時に改めて説明する。そっちは屋上に出ていてくれ』
『分かりました。あなたを信じます』
『ああ。それとだ……』
『はい?』
『アーネスカに爆発系の魔術を何かしら空に向けて発動させるように言ってくれ。武大会の会場からも見えるくらい派手な奴を1発』
『分かりました。また後ででお会いしましょう』
アルトネールはそこでバゼルとの精神の接続を解除する。意識がはっきり肉体にあることを確信して、目を開けた。
「これが……姉さんの能力?」
アーネスカはアルトネールの能力にどれほどの力があるのか分かりかねていた。見ているだけでは何が起こっているのかまったくわからない能力だからだ。
「どうでした? アルト様」
ユウはアルトネールの意識があることを確認して問いかける。
「タワーの門は閉じられ、バゼル達は塔内に閉じ込められてしまったそうです」
「え? それじゃあ、私達……」
「外に出られないってこと?」
ユウとアーネスカが顔を見合わせる。それでは苦労してここまで登ってきた意味がない。
「バゼルは何か秘策があると言っておりました。それに賭けるしかないでしょう」
「秘策?」
ユウはアーネスカに再び視線を合わせる。
「あたしは何も聞いてないわよ?」
どうやら秘策と言うのはバゼルしか知らないようだった。
「バゼルさんを信じるしかないみたいですね。こうなったら」
ユウとアルトネールは同時に頷いた。
「バゼルは屋上に出て待機しているようにと言っていました。まずは、屋上に出ましょう」
3人は1度その部屋を出て最後の階段を上り、屋上を目指す。
扉は開いており、屋上に出るのは案外簡単だった。屋上からは文字通りアルテノス全域を見渡すことが出来た。世界が丸く見えるほどにその景色は壮観だ。だが、それを楽しむだけの精神的余裕はない。
「アーネスカ」
「なに? 姉さん」
「バゼルから伝言です。爆発系の魔術を空に向かって発動するように。だそうです」
「え? なにそれ?」
「私にも何がなんだか……」
それは、この場所から武大会会場にいる何者かに何らかの合図を送れという意味だろうか?
アーネスカはそう考え、少し思案してそれに相応しい魔術弾を選び、回転式拳銃《リボルバー》に装填した。それを武大会会場の方向へ向けて撃つ。銃弾は空中で爆発を起こし、激しい音と光を放った。
「な、長いね……」
「ああ、長いな……」
『リベアルタワー』の最上階を目指して会階段を上るバゼル、ネル、ギンの3人。バゼルとギンはどんどんネルより先行して上っていく。
「人間にこの長い階段はきついよ……」
そう愚痴をこぼすネル。
タワーの壁伝いに設置されたらせん階段。1段1段はさほど段差がないものの、1フロア上がるごとにタワーの周囲を1周するに等しい距離を歩くことになるため、相対距離はかなり長くなる。
「辛ければ背中を貸すぜ?」
ギンがニヤニヤしながらそう言ってくる。もちろんネルの答えはノーだ。
「……遠慮しておく」
「まあ、辛かったらいつでも言えや」
――絶対言わない……!
ネルは何が何でもこの男にだけは頼らないと思った。
「ん? ちょっと待て!」
突然、バゼルが立ち止まりネルとギンの2人を制止する。
「どうしたよバゼル?」
「ギン、それにネル。聞こえないか?」
言われて2人は耳をそばだてる。恐らくバゼルは何かの音を耳にしたに違いない。しかし、何の音が耳に聞こえているのかはわからない。
「別に何も聞こえないけど……」
「いや、確かに聞こえる」
バゼルに続いてギンも何かの音を察知する。
『ァァァ……!』
「!! 私にも聞こえた! この声……!」
「とにかく上のフロアに行くぞ! 広いところで奴を迎え撃つ!」
今3人がいるのは階段だ。こんな所で存分に戦うことは出来ない。
現在58階。自分達が登っている階段の壁にはそう記されていた。その上は即ち59階だ。
59階のフロアに3人がたどり着く。そして、階下から聞こえるあの不気味な叫び声。
『バゼル! バゼル! 聞こえますか!?』
『? アルトネールか。どうした?」
突如としてアルトネールからバゼルに精神感応能力で声が飛んでくる。脳に直接響くような"声≠セ。バゼルはその"声≠ノ意識を傾ける。
『バゼル急いで来てください! 早く!』
『何があったんだ!?』
『今はまだ何も起こっていません! しかし、あと30分後には、ユウとアーネスカが……!』
バゼルは今後自分達がどうなるのかと言う未来を確かめるためアルトネールが未来予知を使ったのだと判断した。実際彼女の未来予知は8割がた当たる。外れる場合は、その未来予知した段階とは別の要因が絡んだ場合、即ち彼女が知りえた未来を変えるために何らかの対策を打った場合だけだ。今の段階。アルトネールが予知した未来は、アルトネール達3人がその場で待機していた場合の未来だ。つまり、今の段階からバゼル等が駆けつけるなりなんなりすれば未来を変えることは可能と言うことになる。
『どうなるというんだ!?』
『ユウとアーネスカが……死にます!』
『なっ……!』
あまりに突然の死亡宣告。これから戦わなければならない敵がやってくる。それを迎え撃とうとしている矢先のことだった。
『可能な限り早く向かう! アルトネールは可能な限りその未来を防いでくれ!』
『やってみます。ですからあなたも……!』
『ああ、可能な限り早く駆けつける!』
『お願いします!』
そこで精神の接続が解除される。
バゼルはギンとネルに向かって言った。
「ギン、ネル! お前達は一刻も早く、アルトネール達の元へ向かってくれ! 一刻も早くだ!」
「え? でも……!」
「どうしたってんだ?」
ネルとギンにはアルトネールの会話内容は伝わっていない。バゼルがなぜ自分達を急がせるのか、その理由は2人にはわからない。
「ユウとアーネスカが死ぬかもしれないらしい」
「え!?」
「アルトの未来予知だな……」
バゼルの言葉に絶句するネル。ギンは即座にその理由を理解した。バゼルは「そうだ」と一言だけ伝える。
「俺があのミイラ男を倒し、お前達の後を追う! お前達は俺がここで食い止めている間に早くアルトネールの元へ向かってくれ!」
「バゼル、てめぇにこの場、任せていいんだな?」
「任せろ」
「なら頼むぜ!」
ギンはそれだけ告げて再び階段を上り始める。
「……お願いします」
ネルは一瞬迷ったが、男が引き受けるといってその場に残ったのに、自分も残ることはかえって失礼だと思い、ギンの後を即座に追う。
2人が階段を再び上り始めたことを確認し、バゼルはこれから上ってくるであろうミイラ男との戦いに備える。
「流石にのどが渇いたな……」
自分が持ってきた水筒のフタを開けて、一気に飲み干す。そして、水筒をそこいらに放り投げる。
『ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"〜!!』
声がどんどん上ってくる。この世のものとは思えない叫び声は、バゼルの背筋を振るわせた。それは武者震いだった。
「フン! 俺の体が震える……。久々の戦《いくさ》だ俺を楽しませろ!!」
ベタベタと水っぽい足音が徐々に聞こえてくる。耳障りな足音だ。
人間が走るスピードより速く、そのミイラ男はバゼルの前に姿を現した。
『オ"……オ"マエ"……クウ"……ゼンブ……クウ"……』
地下で見たときのような非力さは微塵も感じられない。全身が筋肉で膨れ上がったその男はミイラと呼ぶには相応しくない。双頭の男とでも言うべき存在だった。
2つの頭は口々にお互いを、または眼前のバゼルを罵り、果ては何を言っているのかまったく聞き取れない言葉を乱発する。
「来い!」
バゼルは猛り、双頭の男と対峙した。
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